月経の血を使って復讐する女
著者: 吉津安武
最新: 解題
時間: 4 月 前
まとめ:
一九三二年一月二十三日、上海の黄浦江で三十代半ばの日本人女性の死体が発見された。死装束の上に救命胴衣と、明らかに異様な姿である。さらにおかしなことには、剃られた頭頂部には穴が六つ、眉間には梵字の阿字が浮き出ていた。――四か月前。同じ上海で四人の邦人女性が謎の文字を残して失踪するという事件が起こった。〝ア・ラ・カ・ツ〟。いなくなった順番に並べると意味不明の言葉が。上海特務機関長・小野長盛が馴染みの珈琲店のマダム・上条梓乃と雑談中、不可解な言葉について触れると、梓乃は言った。〝それは、かつて存在した薬の名前では……〟。 梓乃の姪・保柴芳子。梓乃の経営する珈琲店で働く彼女は、三十五歳で独身。常にマスクを着用する冴えない女だった。そんな梓乃と芳子には、宿命の敵がいる。上海の王の座を狙い、蒋介石や国民党の招聘したドイツ軍事顧問団と交流。かつて日本から上海に渡った〝秘薬〟を入手するようヒトラーに命じられ、派遣されたナチ党員と手を結ぶ男。実は小野こそが、二人の敵である。梓乃、芳子と、小野の先祖は、約百年前に権力争いを繰り広げた仲だった・・・・・・。…続きを読む