野球じゃないよ、ノタマだよ

Other 60K Active
著者: @ichiryu
時間: 4 月 前
まとめ:

誰もが等しいものを持って産まれてくるダブルディの街。持っているものが同じならば、努力の量が差を分けることになる。努力の楔が生き続ける世界で、その楔から逃れることが許された存在、プロノタマ選手のピッチャー。ダブルディの街を創世したノタマの女神に愛された存在。幼なじみの少女、茜とノタマの試合を見に行った少年、翔人はその試合で女神に認められプロノタマ選手としての道を歩き始める。最初はプロの壁に苦しむものの、飛躍を求めて編みだした魔球、クイーン・プレイを武器に一躍トップ選手へと躍り出る。母親にも認められるようになり、今までずっと求めていたものをようやく手に入れることに成功する。 次の試合に備えてランニングをしていた翔人は、子供の頃に憧れていたプロノタマ選手、川原と出会う。川原は浮浪者のような格好をしていた。川原は完全試合を達成すると宣言した試合であと一人までと迫ったものの最後のバッターにホームランを打たれて完全試合を達成することが出来ず、その試合をきっかけに調子を崩してそのまま引退していた。何があったのか尋ねる翔人に川原はある組織を紹介する。その組織、セーブ・クイーンに話を聞けば分かると。 翔人はセーブ・クイーンのメンバーに会い、衝撃の事実を聞かされる。プロノタマの裏では何の罪もない少女が囚われており、その少女の苦しみのおかげでプロノタマ選手は特別な力を発揮することができ、多くの人々から承認を得られる存在でいられるのだった。 その少女が救う方法は唯一つ。プロノタマの試合で一人のランナーも出さない完全試合を達成すること。完全試合を達成すれば少女が救われる代わりにプロノタマ選手は誰もが憧れるダイヤモンドから見向きもされない石コロに戻ることになる。完全試合を達成できなければ何の罪もない少女は苦しみ続ける。その事実に押し潰されて川原は堕ちていったのだった。 少女の苦しみに目を瞑ってダイヤモンドであり続けることを選んだ翔人。しかし、真実を知ったことにより迷いが生じ、クイーン・プレイも投げられなくなった翔人は二軍落ちを宣告されてしまう。道に迷った翔人は川原に相談する。悩める翔人に川原は優しく告げる。今、人生を振り返って一番後悔していることは何だと思う、と。川原は完全試合まであと一球というところまで来て選ぶことが出来なかった。少女を救うのか、ダイヤモンドであり続けるのか?選ぶことが出来なかった川原は結果を受け止めることが出来ずに、その事実から逃れ続けるだけの人生を送ってしまったと。 逡巡の末、翔人は決断を下す。バッターを次から次へ打ち取っていくピッチャーになるという子供の頃の憧れに殉じようと。その決意と共にマウンドに立った翔人は二十六人のバッターを打ち取り、セーブ・クイーンのメンバーに襲われてスタメンから外れていた清井をバッターボックスに迎える。血の滲むような努力の末にプロノタマ選手となった清井とノタマの女神に認められてプロノタマ選手となった翔人。違う道を経て同じ場所に辿り着いた二人の男はノタマの真実を前に全く別の決意を胸に勝負に挑む。ツーストライクで迎えた三球目。バットの根本に当たったボールは鈍い音を残して翔人が伸ばしたグルーブの中に吸い込まれていった。…続きを読む

Top