最兇(さいきょう)の死神さまに抗え
私の名前は、杉浦美果子(すぎうらみかこ)。十七歳になったばかりの、高校一年生。私が住んでいる海ヶ丘町(うみがおかちょう)には、最強で邪悪な魔物をも撥(は)ね退ける“強力な魔除けの結界”に覆われた聖堂が存在しているの。かつて、私の祖母に当たる、シスターマリアンヌが管理をしていたのだけど、高齢に伴う現役引退。祖母に代わって、祖母との信頼関係が厚い神崎清華(かんざきせいか)が跡を継いで、シスターをしているわ。シスター清華とは四つ違いで、ひとりっこの私にとっては姉のような存在で、良き理解者でもあるの。そして、もうひとつ。シスター清華を語るには外せないことがあるわ。冒頭にも書き記した聖堂にはね、横長の旗を勇ましく掲げた等身大のジャンヌ・ダルクと、クリスティーヌ・ジュレスの白い像が安置されているの。そう、なにを隠そうシスター清華は、悪魔を封じることのできるクリスティーヌ・ジュレスの生まれ変わりなのだ!けれどそれが後に、私が神仕(かみつか)いに変身して、シスター清華の代わりに悪魔を封じる使命を担うことになるなんて、夢にも思わなかったわ。私の使命は、神仕いに変身して悪魔を封じ、ジョーカー二枚を含む、計五十四枚ものトランプカードを集めること。トランプカードは『封印の剣』と呼ばれる剣で悪魔を封じると出現する仕組みになっているのだけど、これがもう大変で……それから強大な力を持つ魔王に狙われ、はるか遠い過去から繰り返されてきた『死の呪い』による、悲惨な黒歴史に終止符を打つために到来した最兇(さいきょう)の死神、カリストにも命を狙われて……カリストはこう言っていたわ。悪魔封じができる私こそが『死の呪い』を受け継ぐ者で、魔王の本体なのだと。彼を通してその事実を知った時、とてもショックだった。幾度となく勃発する攻防戦を潜り抜け、命懸けの、壮絶な出来事を乗り越えて、少しずつメンタルが強化されていった私はカリストに対する恐怖を克服。鉄の勇気をともにして果敢に魔王と対決もしたわ。それまで私は、死神のカリストに何度も殺されかけて恐怖心を抱いていた。私が恐怖を克服できたのは、カリストと渡り合えるヨシュア、地球の地を司る最高神、津雲蒼介(つくもそうすけ)氏のおかげ。正気でいられないほど、私の心を闇に染めようとした魔王に打ち勝てたのは、仲間のシュオンくん、ティオ、そして強力な助っ人になってくれた大天使ミカエル様とウリエル様、退治屋の柴崎剛(しばざきごう)氏、癒やしの魔法使いの異名を持つ医者、ジャック・ロペス氏のおかげ。そしてなによりも、シスター清華、祖母のマリアンヌ、母の由梨絵(ゆりえ)、そして父の京介(きょうすけ)、親友であり、クラスメイトでもある友人達……みんなの支えがあって、くじけることもあったけれど、私はしっかり前を向いて歩いて行ける。はるか遠い昔から受け継がれてきた使命を全て果たした私は今でも、シュオンくん、ティオと一緒に悪魔退治をすることがあるの。封印こそしないものの、祖母からから譲り受けた金の十字架で以て神仕いに変身し、破魔矢で以て、海ヶ丘町に出現する悪魔を浄化しているのよ。これは、十七歳の女子高校生、杉浦美果子が神仕いに変身して悪魔を封じ、命を狙う死神さまに対する恐怖心に打ち勝つために成長する、愛と勇気と希望が詰まったファンタジー物語である。…続きを読む