ある病を患った者だけが閉じ込められる島にも、勇者はやってくる。

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著者: 藤和工場
時間: 4 月 前
まとめ:

ネタバレを含みます。読む方注意。 成人を終え、一六歳になるネネルは、家業のために初めて、故郷の陸地と長い橋で繋がる島に行くことになる。その道中、仕事の師でもある父からケモノの付け耳をするように言われ、ネネルはそれが島に入るためのしきたりか通行手形のように理解し、頭につけて島へと赴く。島に入ったネネルは、取引先である雑貨店で、頭にケモノの耳がある少女アメレに出会う。島はアメレだけではなく、そこに住まう人々全ての頭にケモノの耳があり、また自分と同じ耳も存在するので、やはりしきたりなのだと再確認して、初仕事を終える。次に島へと訪れたネネルは、アメレの妹であり雑貨店の隣でケーキ店を営んでいるスノに出会う。自分よりも年下でありながら、すでに経営者であるスノにネネルは感心した。その会話の中、アメレからケモノの耳は付け耳ではなく、頭から生えているのだと知らされる。戸惑うネネルは、雑貨店のお目付役であるラウドから、島の真実を告げられる。それは、ケモノの耳は病気であり、島はその病にかかった人が集められ暮らす場所であり、スノはその最後の発症者であるというものだった。その事実に、自分はどうするべきかと悩むネネルだが、アメレはそんな姿に出会ったときのまま、少し抜けたネネルでいて欲しいと願われ、そうあろうと誓う。島に行き慣れはじめてきた頃、ネネルは幼なじみで富豪のインスから、島でしか自生しない花を取ってきて欲しいという初めての商談を持ちかけられる。インスに言いくるめられたような形になったが、ネネルは初めての商談に勇み、花を手に入れるために奮闘する。アメレにその花のことを聞こうとしたが、その交換条件として雑務を押しつけられる。その姿を見かねたスノに説得され、アメレは花が咲く場所に連れだってくれる。その場所はアメレが好きだという、海に面した丘のような場所で、咲く花の花言葉が「生まれてきてくれてありがとう」であったことから、三人の誕生日がほどなく近いという話となり、スノの提案で三人合同の誕生日会を催すことになる。ネネルは二人へのプレゼントにと、悩んだあげく、夕飯時の恒例であるラジオがもたらす雰囲気を味わってもらいたいと、ラジオをプレゼントする。アメレは自分の服からリメイクしたエプロンとミトンをそれぞれネネルとスノに、スノは三人分三段重ねの巨大なケーキを用意していた。誕生日会がはじまり、プレゼント交換を終えケーキに立てたろうそくを吹き消そうとしたとき、スノは倒れてしまう。スノが倒れた原因はケモノ耳の合併症が原因で、その進行を遅らせる薬を、前日同症状になった島民に使用したため、スノは一日と持たず死んでしまうと宣告される。島や病気はそういうものだと、受け入れてしまうアメレたちに憤慨するネネルは、医者に詰め寄りその薬を島の外へ取りに行くと言い出す。だが、その場所は家業で使うトラックの足では、往復だけで一日かかってしまう距離だった。絶望にも屈したくないネネルはひとり島を走り出て、地元でインスからトラックの数倍は性能の高い車を借り受け、薬を取りに行く。薬を取りに行った研究所で、ネネルは世のケモノ耳に対する冷遇を見知る。だが大切な人を助けるのに、耳があるかどうかは関係ないと、アメレとの約束を貫き、自分であり続け薬を持ち帰る。薬のおかげで、スノは一命を取り留めたが、島にある一度入れば二度と出てくることが出来ない可能性の高い、集中治療棟へ行くことになる。スノを見送りながら手を振るネネルは幼い日、同じように島へと手を振ったことをアメレに話すと、それは島に来ることとなった、スノを迎えるために手を振っていたアメレだった。アメレはその事を覚えていなかったが、ネネルはもう一度こうしてスノの帰りを待って、ここで手を振ろうと、それまでに立派な商人になっていようと心に誓った。完結したので。この物語の下敷きには「国のハンセン病隔離政策」があります。興味がわいた方は、ご自分で検索などして、調べ、知ってみてください。主人公:16歳朝読小説賞キャッチ: 「想いの剣を握り、踏みだした時、君は勇者だ」…続きを読む

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