人から虐げられ、その苦悩からいつしか死を切望した少女——一ノ宮江美。雨が降りしきる中、踏切に飛び込もうとした時、それを阻止してきた美しすぎる少年——小野(おの)健二(けんじ)。二人は互いに哀しみを背負っていたからこそ、愛し合うようになった。だが、健二は過去に日本最大の暴走族『赤城(あかぎ)』に所属しており、そして関東最強という異名を持っていた。当時の因縁である暴走族『吐夢走(トムソー)夜(ヤ)』の総長——斎藤の魔の手が迫り、健二の運命は大きく瓦解する。『吐夢走(トムソー)夜(ヤ)』は健二の妹を殺した集団で、健二は再びの邂逅に復讐の炎が燃える。だが、『吐夢走夜』を倒すとき、斎藤は苦し紛れでケツ持ちしている暴力団『多田組(ただぐみ)』に応援を頼むも、裏切られる。『多田組』の若頭——佐倉は、斎藤に嘲笑を浮かべながら言った。「お前は健二を勧誘するために利用しただけだ」と——。そして、佐倉は健二に向いて、「お前は『多田組』に入れ。断れば身内を殺すぞ」と脅し文句をつけられる。そして、健二は唯一の身内である江美を守るために『多田組』に入組することを決意する。そのあと、同級生の織田夏木という江美をいじめていた少女は、その『多田組』の総長の孫であり、健二に恋焦がれていた。夏木は暴力団の孫という立場を利用し、江美を殺されたくなければ彼女と別れ、自分と交際しろと脅迫する。それに首肯した健二は、彼女と破局し、『赤城』での親友であった北川に江美を託す。その時に北川に協力を願ったのは、江美に嘘の夢——江美自身に歌手という願望を作り上げ、それを背負わし、そしてその夢を叶えさせてあげてくれないか、と。江美がこの世界に残れるよう、希望を抱けるようにしてあげてほしい——。　この物語は異色の少年少女が真の希望を手に入れようとする、本格ドラマノベル。…続きを読む