『十で神童、十五で才子、二十過ぎれば只の人』男はそんな人間だった。小さな頃は何においても誰よりも優れていた。でも気付いた時にはそうじゃなくて…。彼はそれが気に入らなかった、耐えられなかった。自分はもっとできる、やれる――――――。自分は出来る人間だと己に言い聞かせる虚しい日々。そんな日々は事故死という形で終わりを告げたかのように思われた。しかし、意識を取り戻した男は自分がとある辺境伯家の長男アルテュールとして生を受けていることに気が付く。俗に言う異世界転生である。何不自由ない生活の中で前世の記憶というアドバンテージを生かし、神童と呼ばれることで愉悦感に浸るアルテュール。だが、ある時ふと気が付く。自分なんかよりもよっぽど優れた存在が周りにうじゃうじゃといることに―――。これはとある辺境伯家の長男として再び生を受けたアルテュールが心に巣くう劣等感と戦いながら成長していく物語。…続きを読む