僕の先輩は吸血鬼だ。　吸血鬼といっても、皆が想像するような化け物ではない。もちろん人の血は吸うし、人肉だって食べる時は食べるのだが、それは本当に切羽詰まった時に限られるから、普段は人間と同じような生活をしている。そしてこの平和な日本のことだから、先輩はいままで一度も故意に人を襲ったことはない。極めて安全な化け物である。　先輩は吸血鬼で、血を定期的に摂取しないと体と心を保てない。十字架や日光を浴びても平気らしいけど、こと食べ物に関わる弱点は先輩には効くらしい。この前ガーリックバターを塗ったトーストを食べていたら、物凄く嫌な顔をされてしばらく口を聞いてもらえなかったから。　因みに、二度と食べないと約束したら許してくれた。先輩曰く、血の味が落ちるかららしい。　まあ、そういう細かい事はともかく、これから語る話は僕と先輩の何気ない日常で、吸血鬼と人間が共存できるというちゃんとした実例だ。　だからこれを読んでくれている人たちは、別に夜な夜なトイレに入るたびに十字架をかざしてビクビクする必要はないし、ニンニクを常備して臭くなる必要もない。夜道はあまり歩かないで欲しいけど。　背後から襲われたら、本当にひとたまりもないから。※一話約1000文字です。※できる限り毎日投稿します。※星と応援頂ければ嬉しいです。…続きを読む