あなたの幸せを。いつまでも、願っている。

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時間: 4 月 前
まとめ:

***以下、ネタバレ含むあらすじになります。***シノの住む星には、時折り、『星の落とし子』がやってくる。ある日。彼女の家の前に、何の前触れも足音もなく、彼が落ちていた。一目見て、彼が『星の落とし子』ということが分かった。真っ白い髪。真っ白い肌。見たこともない服を着ている。長く喋らない彼のことを、シノは『小雪』と名付けた。別の星では、特別寒い日に空から真っ白な『雪』が降るという。ぴったりだ、とシノは思った。「僕の名前は小雪じゃないよ」ある日、小雪が遂に口を開く。彼はどこか、この星のことを嫌っている節があった。この星には経済という概念が無く、大人はいつも微笑みを絶やさない。憎しみや恨み、辛みと言った『負』の感情を一切表さない民を、小雪は「反吐が出る」と切って捨てる。小雪には、もっと沢山の知識や人との関わりが必要だ、と判断したシノは彼を学校へと導いた。そこで出会った知識、教員、友人に、月日の流れと共に次第に心が解されていく小雪。そんなある日、担任のアランティアが城に来るようにと連絡を受けた。横着者の彼は徒歩で二週間程かかる城への道中のお供にと、小雪を連れていく事にする。危惧したシノも挙手し、城へと同行したいと願う。斯くして三人で城を目指すことになる。かつて。シノと小雪が居る星とは別の星では、小さな少年が二人。飢えの為に盗みを働きながら、ひっそりと生きていた。名を、『ライト』と『ナイフ』と言う。互いに付け合った名前だ。ライトは、盗みを働く時に光る、鋭利な刃物のようなその瞳から、自分より三歳ほど年が下な彼に敬意を込めて『ナイフ』と名付けた。二人はとてもよく似た身なりをしていた。真っ白い髪。真っ白い肌。貧しいところも。互いのことを……救ってやれないところも。貧しいながらも、二人は春夏秋冬と、廻る季節を共に過ごした。ナイフには教養があり、恩人であるライトに何かを返したいと思い、文字の読み書きを教えた。捨てられていた本を拾って持ち帰り、それらを沢山読んだ。(……………一人で生きて一人で死んでいくんだと、そう思っていた)ささやかな、幸せ。しかしそれも長くは続かなかった。ある日。ナイフが家の前で倒れていた。頭から血を流し、息も絶え絶えで、朦朧とする意識の中、やっと言葉を紡ぐ。「……ごめんな、おれも……、お前のこと、……救ってやれなくて………」ナイフはそう言って、静かに目を閉じた。ライトは絶望した。失って初めて気が付くことがある。ナイフは、確かに暮らしを豊かにしてくれると言うような『救い』ではなかったが、それでも確かに、ライトの希望の光であった。無味乾燥な日々に彩りを、味の無いパンやリンゴに味を、確かに、与えてくれた存在だった。自暴自棄になったライトは『星を渡る乗り物』で旅行するという王の話を耳にし、城に侵入して、その乗り物を盗んだ。新しい星で、新しい自分で、生きていこうと思ったのだった。しかし辿り着いたその星は、『絶望』と言うものを知らない民ばかりであった。初めは自分の知識を活かし、自分を崇めてくれる民に尽くしていたライトは、次第にこの星と民に嫌悪する。自分は『自分』のままなのに。この星では、飢えることも無く、かつては唾を吐かれていたような自分を、崇めている。それが、ーーーー…馬鹿らしかった。がむしゃらに生きてきた自分のこれまでの生は何だったのだろうかと、やる瀬無かった。「王様」いつしかそう呼ばれ、城まで与えられた彼は、しかし、いたずらに人を殺めるようになる。生を弄ぶ。しかしそのことは、城の麓の村にしか知られていない事実であった。王命により、城に近付いたアランティア・小雪・シノであったが、道中の負傷により、アランティアは休養を余儀無くされ、小雪だけが一足先に城へと辿り着いた。「悪いことは言わない、逃げた方がいい」「王様とよく似たご尊顔で」城の麓の村には飢える人、泣き崩れる老婆が居て、小雪の予感は確信に変わっていた。「お前を、殺しに来た」小雪は王を見据え、そう言い放つ。お前を救いに来た、と。王は嗤った。かつて、『ライト』『ナイフ』と呼び合っていた二人は、最悪の形で再会を果たす。小雪と一足遅く、城の麓の村に辿り着いたシノは、王が伝わっている通りの人間では無いと知る。村人に投石機で城を攻撃して脅かして欲しいと言うこと、隣の村で休養しているアランティアと言うものに伝言を伝えて欲しいと頼んで、城に乗り込んだ。シノの計画は小雪を救ったが、しかし予想に反して、王に大切な者の命を奪われた者の怒りからか、三人の居る部屋にも大きな岩が投げ込まれ、進退どころか皆の命までも脅かされる。死んだと思ったナイフー小雪ーが生きていたこと、沢山の人をいたずらに殺めてしまったことに、王は城と共に命を落とすことを望むが、そこに、アランティアが飛び込んできた。「死ねないなら、生きたらいい。生きていさえすれば、きっと、まだ何も、遅くはないさ」アランティアの差し出した手は、届かない。そんな時、脆くなった天井から降り注がれた瓦礫で、アランティア・シノ、王と小雪の二組に別れてしまう。これ以上、此処に居るのは危険と判断したアランティアは、小雪の名前を叫ぶシノを抱えて城を後にした。半壊した城の瓦礫の中、その何処にも、遂に二人の姿は見付かることは無かった。また、違う星で。二人の少年が共に生活をしていた。一人の少年は、多くの人の命を奪った罪を背負い、もう一人の少年は、その少年の罪を半分背負って、二人で生きていくことを誓った。(必死に生きていくことをどうか、ひっそりと見守っていて欲しい。)その願いを祈った時、違う星ではまた、少女が彼らの幸せを、指を組んで祈っていた。二人の知らないところで、神様がそれを聴き届けたかのように、星が流れた。**********生まれ落ちてやって来た、すべての命に。途中で潰えてしまいませんように。絶望ばかりでありませんように。願いを込めて。2021.03.12******pixivのコンテストに投稿した作品になります。全八話、完結済みです。こちらには順次公開させて頂きます。かつて中学生くらいの時に書いたものを、大人になって思い出しつつ書き直してみました。かなり思い入れの有る作品なので、読んで頂けたら嬉しいです!(Fantastic Youthさんの『決壊salvation』をイメージしてに書いた箇所もあります。pixivにはふぁんゆ小説として投稿させて頂きました!よければ、曲と一緒に是非!)…続きを読む

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