中学生の時好きだった少女、吉岡 菜乃花が死んだ。自殺だったらしい。遺書や遺言は残ってなかったという。疎遠になっていた僕がそれを知ったのは、通夜の前日の事だった。この出来事をきっかけに僕の中で止まっていた時計の針が動きだした。何となくの思いつきで新品のノートに家族、友人、そして、菜乃花へ向けた届くことの無い遺書を書き始めた。とめどなく溢れ出す思い出を忘れないように、零さないように、2人の思い出の場所や出来事をなぞっていく。ただここに君が居た証を残す為に。過ぎていく時間の中で君に恋をしていた自分を消してしまわないように。