「越境者たち」の、穏やかな日常。

ライトノベル 10K Active
著者: 高槻菫
時間: 4 月 前
まとめ:

『越境者たちの眼差し』本編執筆開始前に、作者が作品の世界観を掴むために書いているものです。なのでこれから本編に登場するエピソードもあれば、完全に小噺のみとなっているものもあります。時系列もバラバラだったりするのですが、そのあたりはご容赦いただきたく思います。以下、本編粗筋。 魔術が「実学」として持て囃され、魔法が「古典」として過去の遺物となり始めた、どこか別の世界線。 戦乱によって故郷を追われた十三歳の少女 氷室櫻香(ひむろおうか)は、学者であった父がかつて留学していたガルマニア帝国にひとり逃げ延びることとなる。そこで櫻香は、魔法の素となる「詩(ポエジー)」を調査しつつ旅をする銀髪碧眼の美青年 インセルトに出逢う。インセルトによってその類稀な言語能力を見出された櫻香は、彼と行動を共にするうちに、故郷を失って異郷に身を置く自分自身と向き合い、新しい「自分」を確立していくことになる。そしてそれは同時に、自らのルーツに隠された秘密を解き明かしていくことでもあった……。以下、一応の世界観と登場人物紹介。世界:「魔法」と「魔術」がある世界。「魔法」は「詩(ポエジー)」という「言葉」によって、「魔術」は数式によって成立するが、元は「魔法」から派生した学問・技術の総称である。物語開始時点では、「魔術」はこちらでいう科学の立ち位置で持て囃されており、対して「魔法」は過去の遺物として見放され始めている。常和(とこわ)国:主人公の故郷。エスタールから見て東の果てにある美しい島国だが、激しい内戦によって国土が荒廃している。エスタール:大陸西部に位置する地域の総称。大小様々な国で成り立っており、多様性がありつつも宗教や「魔法」「魔術」の発展によって、ある程度共通した文化圏を築いている。しかし数年前にエスタールを二分する大戦争が勃発しており、その禍根は未だ残されている。ガルマニア帝国:主な舞台となる、エスタール圏の一国。「魔法」「魔術」の研究が盛んな先進国だが、数年前の大戦による被害や、他民族国家故の内憂に悩まされている。***登場人物紹介氷室櫻香(ひむろおうか):主人公。常和国出身の少女。物語開始時点で十三歳。故郷の内戦から逃れ、ひとりガルマニア帝国にやってくる。癖の強い黒髪に、朝ぼらけの空のような紅の目をしている。古今東西全ての言語を理解できるという特殊な能力の持ち主。父親が学者。インセルト・リィレン・アルトシュテルン:副主人公。愛称はインス。ベルンハルト魔法・魔術総合研究所に所属する、二十五歳の調査員の男性。魔法科文献学研究班所属。白銀の髪に瑠璃色の目をしている。いっそ芸術品ともいえるほどの繊細な美貌を持つが,実は先の大戦を生き延びた元兵士であり、高い戦闘技術を有する。プリマヴェラ・フォン・グリューネヴァルト:同じくベルンハルト魔法・魔術総合研究所の職員で、魔術研究科工学開発班班長の才媛。二十七歳で、愛称はプリムラ。先の大戦を生き延びた元軍人という共通点もさることながら、同僚のインスとは何かと因縁があり、犬猿の仲。ハンス・ゲルデラー:同じくベルンハルト魔法・魔術総合研究所の職員で、魔法研究科文献学研究班班長。三十歳でインスの上司にあたる男性。穏やかでお人好しな性格も相まって、しばしばインスとプリムラの喧嘩の仲裁役を務めている。ドロテア・シュミット : ベルンハルト魔法・魔術総合研究所の職員で、魔術研究科工学開発斑の調査員でプリムラの補佐を務める女性。インスとは同期ということもあり、何かと助言を請われる相談役。二十八歳。ロラン・ヴィリエ:櫻香が十四歳の冬に旅先で出逢った、十三歳の少年。エスタール内で支配的な一神教の中でも過激派の教団に属していた。よく言えば敬虔で純真だが、悪く言えば狂信的で視野が狭い。聴く者の精神を操れるという、「主に祝福された」特別な歌声を持つ。ヨナタン・ベルンハルト:ベルンハルト魔法・魔術総合研究所の所長。七十五歳の老紳士。専門は魔術創成期の歴史研究で、インスの恩人でもある。…続きを読む

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